不動産競売市場とは?
不動産競売市場は、不動産流通市場全体でも、一番透明で公正な不動産市場として注目されています。国も一般投資家が参入し易くするために、民事執行法の改正を行っており、今では不動産投資市場の一分野と認知されるようになってきました。しかし、初めて『競売』という言葉を聞いた方は、怖くて手が出せない市場だと思っている方もいるのではないでしょうか。
不動産競売とは、一言で言うと、裁判所を通じて土地や建物などの不動産を購入することができる制度です。例えば、住宅ローンなどの借入金の返済が滞った場合、銀行などの金融機関は、そのお金を回収しようとします。貸したお金の担保として金融機関が設定した抵当権がついている土地や建物を、裁判所に申し立てて競売という手続きを利用して売却するのです。購入希望者は、一定期間内に希望金額を申し出ます。その中で一番高い価格を付けた人が落札するという仕組みです。
また、不動産競売には、一般の市場で流通している物件と比較した場合、以下のような特徴があります。
競売手続きの流れ。
公告
[裁判所・新聞・インターネット等に掲示]
入札希望者はこの間に物件情報を収集することになり、インターネット上で三点セット
(物件明細書、現況調査報告書、不動産評価書)を確認します。
入札
[指定された期間内に保証金(売却基準価格の20%が基準)の納入]
入札額は、売却基準価額から20%減額をした金額が
「買受可能価額」であり、それ以上であればいくらでも構いません。
開札
[裁判所にて公開開札]
裁判所はあらかじめ定めた開札期日に入札書が入った封筒を開き、
最も高い価格で入札した者が「最高価買受申出人」となります。
売却許可決定
[裁判所が審査]
その「最高価買受申出人」が適格かどうかを裁判所が審査して「売却許可決定」を出します。
その後一定の「執行抗告期間」(所有者や占有者などからの異議受付期間)を経て、
売却許可決定が確定します。
代金納付通知
[裁判所から郵送で代金払込日時等の通知]
競売許可決定確定から1ヶ月程度の間に代金納付期限通知書が送られてくる場合が多いです。
代金納付期限通知書には、代金の納付期限、納める代金額、用意すべき書類が記載されています。
代金納付
[所有権の取得]
この時点で所有権を取得したことになります。
登記申請は裁判所の嘱託で行われますが、
買受人が指定する司法書士や弁護士に依頼することも可能です。
登記
[裁判所が職権により登記を嘱託]
買受人は登記に必要な書類を裁判所に提出し、
当該不動産の所有権移転登記等の手続きを裁判所登記官にて行います。
投資の成否の8割は購入時で決まる!
近年の不動産投資ブームにより、これから不動産を所有して投資を行いたいという方は大変多くなっています。老後不安、生活不安、教育資金不安など様々な不安やリスクを少なくすることが、投資を検討される理由だと思われます。また、既に不動産を保有されている方であれば、現在保有している資産を次世代に繋げるために、不動産の入れ替えや買い増しを検討されている方もいらっしゃると思います。
迫りくるリスクや不安の中で、一日も早く投資を始めたいと思うのも、投資家の心情としては理解できます。しかし、本当にその投資で良いのでしょうか。不動産投資で失敗されているオーナーの中には、高いと思うが仕方なくこれでいいやと物件を購入し、後からこんなはずではなかったと後悔されている方も多いのではないでしょうか。
では、ご自身の投資の中で、「いくらなら高いのか?」「いくらなら安いのか?」はどのようにして決めるのでしょうか。皆さんが投資をする際には、「どのくらいの現金(資産)を利用して」「いつまでに(何歳までに)」「いくら欲しいのか」を知らず知らずのうちに決めています。「このくらい現金を入れるのであれば、この位の利回りは欲しい」や「このくらいの資産が20年後あればいい」などと言ったように、皆さんは具体的なイメージを持っているのです。その将来の姿を考えた時に、投資家が期待する投資全体の利回りがあります。それを割引率といいます。
そして、購入時の初期投資金額が決まっている場合、毎年のキャッシュフロー、売却時の手残り金額を計算して、その投資全体のパフォーマンスをはかる指標がIRR(内部収益率)となります。初期投資額が投資全体で何パーセントの効率で運用できているのかを計る指標です。今日では、一般の市場に流通している物件の多くは、実際の評価以上に値段が吊り上がっており、投資対象から外れることが多いので、なかなか次の投資へ進めないという声をよく聞きます。これは、初期投資額が必要以上にかかるために、期待する投資全体の収益率を満たす投資になっていないということなのです。
それでは、投資によりオーナーが期待する収益率を満たすには、どのようにしたら良いのでしょうか。不動産に精通した経営管理士であれば、収益改善により資産価値を高め、将来売却する際の価格を上げたり、毎年のキャッシュフローを向上させたりする努力を行います。ただ、将来予測の可能年数は5年程度といわれており、その先となると見通すのは至難の業です。とすると、購入時に物件をどれだけ安く仕入れられるか否かが、投資を成功させる重要な要素となるのです。
保有期間中のキャッシュフローと売却時の値段が一緒であるならば、初期投資コストが少ない方が当然投資としては有利です。良い不動産を出来るだけ安く買いたい。一般流通物件ではそれができないので、「掘り出し物」がないかと躍起になるわけです。しかし、一般流通物件の中では、極端に売り急いでいる物件以外はなかなか「掘り出し物」になる物件はありませんし、そのような物件は不動産会社などのプロ投資家が水面下で購入しています。しかし、競売物件の中の投資向き物件であれば、「掘り出し物」になる可能性があるのではないでしょうか。先ほどご紹介したIRR(内部収益率)で考えてみましょう。
以上のように、購入価格が200万円違うと、表面利回りは7.6%→9.3%になりました。IRR(内部収益率)は7.3%→11.9%へと変化しました。仮に全額自己資金で投資したとしてもIRRは5.1%→8.0%へと変化します。競売不動産市場が魅力的である理由がお分かりいただけたでしょうか。初期コストを抑える(物件を安く購入する)ことにより、最初から有利な立場で投資をすすめることが出来るのです。
競売物件は経験が必要。
宅地建物取引業者が売買している一般流通不動産では取引されない物件も、競売手続きでは対象となることがあります。どのような物件であるかを「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」のいわゆる三点セットで先ずは確認します。その場合、以下のような物件が対象となっていることがありますので、注意が必要です。
それでは、三点セットの読み方をマスターし、リスクをある程度判断できるようになれば、入札してもよい物件かどうか判断できるのでしょうか。いえ、そうではありません。三点セットは、物件の内容や条件を把握するための重要な手掛かりにはなりますが、これだけでは分からないことが多いのです。一般流通不動産の取引では、宅地建物取引士が重要事項説明で詳しく説明してもらえる内容も、三点セットでは明記されていない、あるいは、法的な表現で分かりづらいという場合もあります。
不動産競売を検討する場合は、現地調査・役所調査・登記情報調査などを行い、その内容の確認及び修正を行います。その上で収益物件として考えるのであれば、家賃はいくら取れるのか、賃貸物件の需要はあるのか、諸費用がどのくらい掛かるのかといったことを予測する必要があるのです。
不動産競売固有の特徴を理解し、短い期間で入札対象物件の調査を行った上で適切な入札価格を判断しなければ、いつまで経っても落札することはできません。これは、一般の流通物件がいくらで取引されているか、建物を貸すことによって得る収入を現在価値に置きかえて計算する収益還元法による計算、過去の落札価格等様々な情報を集約し判断することになります。幸運にも落札できたらその後も、明渡交渉・鍵の引渡し・残置物処分などの手続きも法律に従って行うことになりますので、かなりのスピードと正確性、不動産に関しての高度な知識が必要となります。
一般投資家などの個人が落札できるようにはなりましたが、まだまだ宅地建物取引業者(不動産業者)が落札していることが多いです。いわば、不動産業者の物件仕入れに参加しているようなイメージでしょうか。そうすると、入札で不動産業者と競合する物件の場合、業者が入札する価格よりも高い値段をつけなければ落札できません。業者は仕入れた不動産に利益をのせて一般市場に流通させます。流通価格と業者の入札価格の間の金額で入札をすることが、個人で入札をされる際のポイントになります。業者の仕入れ値付近で手に入れているからこそ、出口(売却時)でキャピタルゲインが見込むことができるのです。
当社の競売サポートの進め方ですが、オーナーの資産状況をヒアリングした上で、投資の方向性・物件のボリュームを決めていきます。そして、その方向性にあった競売物件をご提案し、入札価格を助言する流れとなります。私たちは、三点セットを見ただけで物件の良し悪しを判断することは行っていません。なぜならば、投資の方向性・物件のボリューム・資金繰りの状況はオーナーによって様々だからです。あるオーナーには良い物件だったとしても、他のオーナーには悪い物件かもしれません。オーナーの期待を数値化し、その数値を判断基準として入札していくことで、失敗しない不動産投資が可能となるのです。